解説記事WordPress関連EmDash 1.0 公開:記事作成:

EmDash とは。WordPress の「後継」を名乗る Cloudflare 製 CMS と、移行すべき人・しない方がいい人

ひとことで言うと:EmDash(エムダッシュ)は、Cloudflare 社が2026年4月に発表し、9月に正式版(1.0)を公開した、無料で使える新しい CMS(サイトの中身を管理する仕組み)です。「WordPress の精神的な後継」を名乗っていますが、WordPress のコードは一切含まず、いまのテーマやプラグインは動きません。記事やページの中身は移せても、見た目と機能は作り直しになります。開発者が保守する情報発信サイトには良い選択肢になりつつあり、ネットショップや会員制サイトには、まだ向いていません。

何が起きたか

世界のWebサイトの多くは WordPress で作られています。WordPress は PHP という仕組みの上で動き、「プラグイン」と呼ばれる拡張機能を足していくことで、お問い合わせフォームからネットショップまで何でも作れるのが強みです。一方で、HEIMVAIL のニュースで何度も取り上げてきたとおり、安全上の問題の多くはこのプラグインから起きています。WordPress のプラグインは、家の増築部分に例えると「母屋と廊下でつながっていて、どの部屋にも自由に出入りできる」構造だからです。ひとつの増築部分に鍵のかけ忘れがあると、家全体に入られてしまいます。

Cloudflare 社は 2026年4月1日に「EmDash」という新しい CMS を発表し、2026年9月28日に正式版 1.0 を公開しました。ライセンスは MIT で、CMS そのものは無料です。Cloudflare 自身の公式ブログも EmDash に移行済みと公表しています。設計上のいちばんの違いは、拡張機能の扱いです。EmDash の登録サイトから入れた拡張機能は、それぞれ「鍵のかかった個室」で動き、管理者が許可した権限(たとえば「記事を読む」「外部のこのサービスとだけ通信する」)だけを与えられます。増築部分ごとに玄関と鍵が別になっている家、と考えると近いでしょう。

ただし、正確に知っておくべき点が2つあります。ひとつは、この「個室」の仕組みが働くのは Cloudflare の有料プラン(Workers Paid、月5ドルから)を使う場合で、開発者がコードで直接組み込む「ネイティブ型」の拡張機能には適用されないことです。もうひとつは、EmDash は WordPress の派生版ではなく、まったく別のソフトだということです。公式ドキュメントは「EmDash は PHP も、WordPress のテーマも、WordPress のプラグインも動かしません」と明記しています。

誰に関係するか

WordPress でサイトを運用しているすべての方に「知っておく価値」はありますが、いますぐ動く必要があるのは一部の方だけです。

移行を検討する価値がある場合

いまは移行しない方がいい場合

「後継」という言葉から「いずれ全員が移るもの」と受け取る必要はありません。公開から1か月あまりの新しいソフトであり、実際に使った複数の検証記事も「開発者が保守する情報発信サイトには本物の選択肢。ふつうの会社サイト全般の置き換えには、まだ早い」という評価で一致しています。

何をすべきか

1. いま使っている機能を棚卸しする

移行の可否と作業量は、ページ数よりも「どんなプラグインと機能に頼っているか」で決まります。WordPress の管理画面「プラグイン」一覧を書き出し、それぞれ「何のために入れているか」をひとこと添えてください。これだけで、移行の相談が具体的になります。分からない場合は、教材「制作会社に確認すること」の質問リストが使えます。

2. 「中身は移せる、見た目と機能は作り直し」を前提に判断する

公式の移行ツールで引き継げるのは、記事・固定ページ・カテゴリー・タグ・投稿者・画像などの中身です。WordPress 側に「EmDash Exporter」という専用プラグインを入れる方法なら、コメント・メニュー・ロゴ・SEO の設定も移せます(2026年10月時点で WordPress 公式のプラグイン一覧には載っておらず、開発元の GitHub から入手します)。一方で、次のものは移せない、または手作業の確認が必要です。

3. 移行するなら、順番を守る

  1. WordPress のデータベースと画像フォルダをバックアップし、現在の URL 一覧・メニュー・使用機能を記録する
  2. EmDash 側に見た目(テーマ)と、必要な機能の置き換えを先に用意する
  3. 中身を取り込み、下書きになった記事と、空になったブロックを確認する
  4. 古い URL からの転送を設定し、主要なページを実際に開いて確かめる
  5. 画像の取り込みが終わるまで、古い WordPress を公開したままにする(移行ツールは古いサイトから画像を取りに行くため)。問題が出たときに戻せるよう、しばらくは残しておきます

移行後の保守は、WordPress の「本体・テーマ・プラグイン・PHP」の更新から、「EmDash・Astro・依存部品・Node.js」の更新に置き換わります。保守がなくなるわけではなく、種類が変わると理解しておくことが大切です。続け方は教材「セキュリティ対策を『続ける仕組み』にする」にまとめています。

よくある質問

EmDash に移行すれば、WordPress より安全になりますか?

「自動的に安全になる」とは言えません。EmDash は、登録サイトから入れた拡張機能を「個室」で動かし、許可した権限だけを与える仕組みを持っています。これは WordPress の拡張機能がサイト全体に手が届く構造より、被害を小さくしやすい設計です。ただし、この仕組みは Cloudflare の有料プランでのみ働き、開発者がコードで直接組み込んだ拡張機能には適用されません。どの CMS でも、更新を続けること・信頼できる拡張機能だけを使うことが前提です。

いま使っている WordPress のテーマやプラグインは、そのまま使えますか?

使えません。EmDash は WordPress のコードを一切含まず、PHP も WordPress のテーマ・プラグインも動きません。記事や固定ページなどの中身は移せますが、見た目と機能は EmDash 用に作り直す必要があります。

ネットショップ(WooCommerce)のサイトも移行できますか?

2026年10月時点では見送るのが安全です。EmDash には WooCommerce に相当する機能がなく、移行ツールを使っても商品の価格や品番は引き継がれないことが実際の検証で報告されています。会員制・予約・ネットショップが中心のサイトは、現時点では WordPress を保守し続ける方が現実的です。

費用はどれくらいかかりますか?

EmDash 自体は無料で、かかるのは動かす場所(Cloudflare か、Node.js が動くサーバー)の利用料です。Cloudflare の無料プランでも管理画面や記事の公開は動きますが、拡張機能を「個室」で動かすには月5ドルからの有料プランが必要です。いま払っているレンタルサーバー代と、この利用料を並べて比べてください。これとは別に、見た目の作り直し・機能の置き換え・転送設定・確認作業という人の作業が移行費用の大半を占めます。ページ数と使っている機能の数で大きく変わるため、棚卸しをしてから見積もるのが確実です。

WordPress からの移行をご検討の方へ

HEIMVAIL を運営する合同会社AJARA では、WordPress から EmDash への移行を承っています。「移行した方がいいのか」の判断から、見た目の作り直し、中身の取り込み、転送設定、移行後の保守の引き継ぎまで、ひとつの窓口でお受けします。上で書いたとおり、移行しない方がいい場合は、そのようにお伝えします。

初回のご相談と概算のお見積りは無料です。メールに次の3点を書いていただけると、具体的なお返事ができます。

EmDash への移行を相談する

サイトの中身を拝見してから、移行の可否・概算・期間の目安をお返事します。無理に移行をお勧めすることはありません。

参考にした公開情報

この記事は 2026年10月28日時点の公開情報をもとに、セキュリティ担当がいない方にも分かるよう編集部がまとめたものです。EmDash は公開されて間もないソフトで、機能・料金・対応範囲は短い期間で変わります。判断の前に、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。個別のサイトの安全や、移行の成否を保証するものではありません。